互いを担ぎ合う組織にする

祇園 涼介

会社の代表を務める。
カバ好きが高じて商社勤務、ジーンズ屋を経てギルギルタウンへ。
最近は歯磨きのフォームを改良し、絶好調。自慢の大前歯が自己ベストを更新中。
好きなことは乗馬と旅行。

夢の二重螺旋構造で組織を前に進める

──エネルギーで動く会社のつくり方

何かを動かすには、必ずエネルギーが必要だ。
それは組織でも、人でも、夢でも同じだ。

エネルギーには大きさと方向――つまりベクトルがある。
この矢印は、太く、大きく、そして長くなくてはならない。
そして、決して枯渇してはいけない。

私はずっと考えていた。
どうすれば、このエネルギーを最大に発揮できるのか?

その答えが「夢の二重螺旋構造」だ。


エネルギーは上下で回る

組織はよく“ヒエラルキー構造”で語られる。
上司がいて、部下がいて、その下にまた部下がいる。

けれど、本来そこに必要なのは“上下”ではなく“相互”のエネルギーだ。

上司は部下の夢を叶えるために動く。
部下は上司の夢を叶えるために動く。

この双方向のエネルギーが螺旋のように絡み合いながら、
お互いを押し上げていく。
それが「夢の二重螺旋構造」だ。

この構造が成立すれば、組織は半永久的に動き続ける。
上下関係ではなく、夢関係でつながったチーム。
これが、私が理想とする組織のかたちだ。


一方向の夢では、限界がくる

私はこの原理を、ジーンズブランドをやっていた頃に痛感した。
23歳の私は本気で「ジーンズで世界を変えよう」としていた。

世界最高品質のジーンズを、世界最高の色落ち環境――東アフリカで育てる。
これで理論上、世界一のダメージジーンズができる。

でもそれだけじゃない。
アフリカの貧困地域では、先進国の“古着支援”が逆に市場を壊していた。
ならばその逆を作ろう。
アフリカの人々が育てた“最高の一本”を、先進国のセレブが買う。

使い古すほど価値が上がるジーンズ。
その哲学で、貧困と富裕を“デニム一本”でつなげる。
そんなビジョンを描いていた。


夢を担がれたのに、急停止

その想いを話すと、たくさんの人が力を貸してくれた。

今も一緒に会社をやっている亮太。
文章で人を惹きつけるライターのジュン。
全力でジーンズの魅力を語る熱血営業のミゾ。
超少量生産を引き受けてくれた職人さんたち。

たくさんの人が、私を担いでくれた。
そのおかげで、私は夢に向かって走り出せた。

でも、4年ほど経ったときに気づいた。
動きが止まったのだ。

自分は多くの人に支えられてきたのに、
自分は誰の夢も支えられていなかった

自分が進むほど、周りが苦労する構造になっていた。
その瞬間、私は完全に動けなくなった。


夢は重なると、螺旋になる

一人の夢では、エネルギーは長く続かない。
でも、互いの夢が絡み合うと、そこに循環が生まれる。

上司は部下の夢を叶えるために走る。
部下は上司の夢を叶えるために走る。
この2つのベクトルが合流した時、
エネルギーは“上昇する螺旋”になる。

そして、上のレイヤーに立つ人間ほど、
より抽象度の高い夢――つまり、部下の夢の延長線上にある夢を掲げる必要がある。
そうして構造が多層に積み重なっていけば、
組織全体がひとつの生命体のように動き出す。


襷をつなぐ組織へ

一人で100キロ走るのは苦しい。
でも、襷をつなげば完走できる。

人は自分のためよりも、誰かのために動く時に、
本当の力を発揮する生き物だと思う。

夢を支え合う組織。
誰かの夢の中に自分の夢があり、
自分の夢の先に誰かの夢がある。

そうやって二重螺旋を回し続ければ、
きっと気づいた時には、想像もできないほど遠くへ来ているはずだ。

「結果的に全員の夢が叶い、
とんでもないところまで来ていたな。」

そう思える組織でありたい。