前編|僕のキャリアを決定づけた3億円事件

大矢根 翼

会社員時代のブログ趣味が高じてライターになり、ライターの仕事をしていたら開発が楽しくなり、気付けばギルギルタウンでいろいろやっている。
いまだに「Twitter」「RT」「ふぁぼ」と言い募る守旧派。
趣味はクルマとサバゲーとPCゲーム。

こんにちは。
ギルギルタウンでシステム開発やコーディングなどを担当している大矢根と申します。

古くは「立身出世」という四字熟語が生まれるほど、歴史を通して社会人の人生では「偉くなる」「出世する」ことが貴ばれてきました。

ところが僕のポンコツ具合を前にすれば、どんなにイージーな出世も脱兎のごとく逃げ出すのです。出世という概念と僕で永久機関が作れるのではないかと本気で考え、眠れなくなって翌日の会議に遅刻したこともあります。

だって値下げしていいって言うから

僕は法政大学という、防衛省の横で左翼がアジっている大学を卒業しました。

私立文系の大学生は4年生の後期には単位が足りている人が大半なので、めっちゃ遊びの誘いが来ます。
ところが単位を落としまくっていた上に1年生から卒業に関係ない授業ばっかり受けていた僕は8割方を「必修の英語の授業がある」「第二外国語の単位が足りてなかった」で断っていました。

そうこうして大学をギリのギリ、30歳を迎えた今でも単位が足りない夢を見るほど首の皮一枚で卒業した僕は、自動車の部品を作るメーカーに就職しました。

志望理由は「僕が就活を始めた段階で募集してたのがそこだったから」です。

会社員になって2年目くらいのこと。
僕はとある大手メーカーと部品単価を交渉する担当に就いていました。今思えば「値下げしろ」と言われるのを既読無視しているとお給料が出るんだから不思議な施設に通っていたと思います。

さすがに先方の偉い人から電話がかかってきてビビった僕は、上司に確認を取って値下げを受け入れました。

ところがどっこい、その値引き額と受注品数的に決算をまたがないと値引きをしてはいけない部品だったのです(先方と僕のいた会社では決算時期が違った)。
ポンコツな僕はそんなこと露知らず(というか話をちゃんと聞いておらず)、

「それじゃあ値下げしておきますね~(システムポチポチー)」
先方も
「対応早くて助かるわ~(ガチャ)」
と上機嫌でした。

ドアってな、200kgあんねん

その月の決算が終わった翌日、僕のoutlookに部長から一通のメールが入っていました。

「(タイトルなし)304会議室にきてください」


やっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっべ。

これは絶対にヤバいやつ。
そもそも部長から直でメールが来ることなんてほとんどありません。

身に覚えがないけど100%怒られるし、その後の身の振り方が下手な僕は50%の確率で相手の怒りをブーストするので怒られ率150%。

「シモヘイヘが待ち構える森に突撃するソ連兵」の気分を冷房の効いたオフィスで味わいながら僕は304会議室に向かいました。

304会議室はプロジェクトの価格決定会議などに使われる広めの会議室で、プロジェクターも直視すると失明するぐらい明るいやつが置いてありました。
この部屋を使うタイミングは大抵部課長クラスに根回しを済ませた上で役員のご都合を伺ったあと。
つまり手ぶらで中途半端な時間にノコノコ入っていく場所ではないわけです。

わかりますかね、重要な部屋のドアって物理的に重くて、気密性が高いから一瞬「ミチ」ってなってから開くんですよ。
この時ほど「鍵かかっててくれ!」と思ったことはありません。
鍵をなくすたびに「頼む今朝の自分!鍵を閉め忘れてろ!」って思ってる僕が言うんだからガチです。



「ミチッ… フゥーワ」
開きやがったチクショウ。

ドアの切れ目の先に見えたのはパソコンに目をやる課長。

その隣に部長。

その隣に本部長。

その隣になんか会社案内資料で見たことがある人。

クソが。穴熊みたいなフォーメーション組みやがって。
それならこっちも守備陣形を組んでやりたいところですが、あいにく武器になりそうなものは尻ポケットの洗い忘れたハンカチぐらい。丸腰で「歩」を進めました。

部長「座って」

次回:大矢根死す、デュエルスタンバイ!