ヒッピーOSで動く起業家の時代へ
起業家の反対は何か?
その答えの一つは「ヒッピー」かもしれない。
起業家とは、野心家であり、お金を稼ぐために一直線に突き進む人たち。この資本主義社会で一気に成り上がろうとする象徴でもある。
一方で、ヒッピーとは、俗世から距離を置き、LOVEやPEACEといった言葉を掲げ、人間の本質や世界の真理を追求する人たちだ。

彼らはしばしば「現実から逃げた人たち」と揶揄される。だが、本来ヒッピーとは、社会の不条理に最も敏感で、“愛と自由”を武器に、既存の価値観に挑んだ人たちである。戦争や差別、過剰な消費社会に対して、“もう一度人間らしい生き方を取り戻そう”とした思想家たちの集まりだ。
彼らの思想の根底にあるのは、調和と反抗の共存だ。誰かと争うためではなく、争うこと自体から降りるために、別の生き方を選んだ。それが彼らの「自由」だったのだろう。

起業家にこそヒッピーを。ヒッピーにこそ起業家を。
私はずっと思っている。起業家にこそヒッピーの考え方が必要で、ヒッピーにこそ起業家の考え方が必要だと。
なぜそう思うのか。
それは、私自身が20代を「ヒッピーOS」で生きていたからだ。
私の中にあるヒッピーOS
そもそも、なぜ人は俗世を離れてヒッピーになるのか。
それは、社会がどうしようもないほどの“不条理”で満ちていることに気づいてしまったからだろう。
人が幸せを追求するよりも、目の前の手段や短期的な利益のために命を燃やしているように見えた。それ対して、「人生はそうじゃないだろう」と思ったんじゃないか。
私はそうだった。新卒で入った会社を退職し、ジーンズ屋として起業した。でも、お金を稼ぎたいなんて一度も思わなかった。というより思えなかった。
ただ純粋に、人とのつながり、
そして、「幸せに生きるとは何か」を考えたかっただけだったからだ。

経済合理性ゼロ、思想ヒャクの20代
5万円のジーンズを、往復8万円かけて北海道・釧路まで手で持っていった。お金にもならないのに、1年間山でひたすら穴を掘った。世界各地でジーンズの色落ちを試すためにアフリカへ行き、強盗に襲われ、死にかけたこともある。
すべて、経済合理性とは真逆の行動だ。だが、そのどれもが、私の中の“真理の探究”だった。
何が正しく、何が豊かで、何が幸せなのかを知りたかった。人間の根源を探るように生きていたのだ。

ヒッピーOSを資本主義のコアに組み込む
そんな私が今、仲間と共に20人で100億円の売上を作る会社を目指している。経営者として、数字を追う側に立っている。
個人としての幸せは、もう十分に理解した。どうすれば満たされるかも、体でわかる。でも、それは自分ひとりの話だ。
私が生きて、死んで終わってしまえば、それでおしまい。
娘の世代は? そのまた孫の世代は?
100年後、500年後、世界は何か変わっているのだろうか。
幸福の追求を諦めないビジネスパーソン
ヒッピーのOSで走り抜けた20代前半の経験を、この資本主義経済の中に組み込まなければならない。
ビジネスパーソンだからといって、幸せを追求することを諦めてはいけない。お金を稼ぐことと、愛や平和を求めることは、矛盾しない。むしろ、両方が揃ってようやく世界は前進する。
お金を、LOVE & PEACEで回す。
それが、これからの時代に目指すべき経営だと思う。
ヒッピーのように自由に考え、起業家のように最後まで全力で実行する。その中間にこそ、新しい社会のかたちがある。



